ビジネスにおけるデザインの重要性と、今後のデザイナーの役割とは?

ビジネスにおけるデザインの重要性と、今後のデザイナーの役割とは?






2018年5月、経済産業省と特許庁は企業のブランド力とイノベーション力を向上させるためにデザインを活用する内容をまとめた「デザイン経営」宣言を発表しました。ブランド力・イノベーション力を向上させ、企業の競争力向上につなげる目的があるようです。

ビジネスにおけるデザインの重要性については以前から言われていた事で、過去記事で紹介した水野学さんの著書でも、経営とデザインの深い関わりについて書かれていました。当然、デザインのあり方が変わればデザイナーの役割や求められるスキルも変化するはずで、ビジネスとデザインが深く関わる時代に、デザイナーはどうあるべきか?を真面目に考えてみようと思います。

モノからコトの時代へ

モノからコトの時代へ

モノからコトへ」というキーワードを聞いたことがあるでしょうか?
最近よく耳にするこのワード、ビジネスとデザインの関わりに重要な意味を持っているのですが、何がどうして「モノからコトへ」変わったのでしょうか。

消費行動の変化

ある新聞の記事に「平成生まれの若者は物欲が希薄で、車やファッションにではなく、趣味や経験のためにお金と時間を使う。モノよりも経験や体験に魅力を感じる傾向にある。」という内容の事が書かれていました。

この流れは、若者だけでなく30~40代の世代でも同様に起きている気がします。
その原因として大量消費時代の陰りや、SNSの普及による変化などが挙げられると思いますが、いずれにせよ消費者のニーズは「モノからコトへ」変化していると言えるのではないでしょうか。

購買動機の変化

以前は「とにかく新しいモノが欲しい」というユーザーの欲求が高く、新機能やスペックに重点を置いた商品を開発する企業が多かったように思います。その頃のユーザーは、スペックや機能が高ければ「良いモノ」という認識を持っていたので、企業側の考え方としても特に問題はなかったわけです。

ところが最近は、若者を中心にスペックや機能ではなく、モノが実現するコトの豊かさや満足度で商品やサービスを選ぶような変化が起こっています。

例えば、どれだけ高性能でハイスペックのデスクトップPCを開発しても、若者にとって普段の生活に欠かせないスマホの方がよっぽど価値があり満足度の高い商品なのです。
機能やスペックよりも、どう自身の生活の質を向上させ、満足度を高めてくれるかという考え方が購買動機に大きく影響する時代に変化しているように思います。



ブランディングが重要視される時代へ

ブランディングが重要視される時代へ

私自身は、ブランディングについてあまり詳しくはないので多くを語る事が出来ませんが、それでもデザインとビジネスが深く関わるとすれば「ブランディング」というキーワードに辿り着く気がします。

ブランディングで企業価値を高め、同時にユーザーの満足度も上げる事が出来るのは、経営とデザインが深く関わることで実現するブランディングしかないと思います。

企業目線ではなくユーザー目線

とは言え、いくら経営者とデザイナーが深く関わって企業ロゴやホームページを作ったとしても、ユーザーありきで考えられてなければ本当の意味での「ブランディング」とは呼べません。

と言うのも、ネットが普及していない時代は、企業やマスメディアから発信する情報に「信用性」がありました。ある程度、企業側が優位に立ち情報をコントロールできた時代だったので、表面上だけデザインし「付加価値」をアピールしたブランディングでも通用したかもしれません。

ただ、ネットで検索すれば大量の情報が手に入る現在、中途半端なブランディング方法では、もはやその価値はユーザーには届かなくなってきました。そのため、企業の価値ではなくユーザーが企業に求める価値を考えたブランディングを考える必要があります。

ユーザーがブランディングを後押しする

ユーザーは企業が発信する情報よりも、むしろネット上の口コミやSNSなどのコミュニティからの情報に依存している傾向にあります。誰しもAmazonや楽天で低評価がついている商品は購入を控えるし、逆にブログで絶賛されている飲食店には足を運んでみたいと思うものです。

当然、企業に対してもこの傾向が当てはまるので、ブランディングが成功するかしないかはユーザーの共感や発信にかかっているとも言えるのではないでしょうか。
企業ホームページに掲載するお客様の声よりも、SNSやブログにある個人の実体験の方が何倍も説得力があるので、SNSやブログ内で取り上げてもらえるような発信方法を考える事もブランディングには必要になってきます。

SNS上で「この企業の商品は良かったよ!」というユーザーの共感や体験が、自然とブランディングの後押しをしてくれるはずです。







今後デザイナーはどうあるべきか?

今後デザイナーはどうあるべきか?

ユーザーの購買行動の変化は、企業の考え方やユーザーとの関係性までも変えてしまいました。

そんな変化が起きている時代に、デザイナーは一体どうあるべきで、どんなデザイナーが必要になるでしょうか?
印刷会社勤務のデザイナーが言う事じゃねぇよ!という意見もあるかもしれませんが、ちょっと真面目に考えてみたいと思います。

幅広い視野と知識を持つデザイナー

これは結構前から感じてたというか…一部で言われていた事でもあるのですが、新卒採用時に美大芸大卒やデザイン専門卒を採用しない企業が増えいているそうです。

特にWEB・IT系の企業に見られる傾向で、経営や経済・法学などデザイン以外を学んだ人がデザイナーとして採用されているみたいです。
おそらく「デザイン」という言葉がカバーする範囲が以前より広がっていて、企業の利益を上げるためのデザインを作るためには、幅広い視野や知識が必要になっており、局所的な意味での「デザイン」が通用しなくなっている事が原因と思われます。

今後はデザインに関する専門的な知識と、その他の幅広い知識をあわせ持ったデザイナーが必要とされ、今まで以上に「イラレとフォトショップを使えるだけ」というようなオペレーター的人材が活躍する機会が減るのではないでしょうか。

もちろん学校のカリキュラムも時代の流れと共に変化すると思うのですが、デザイン系の学校に通っている生徒さんは、デザイン以外の分野にも積極的に視野を広げておいた方が良いと思います。

バランス感覚があるデザイナー

自分の個性よりもユーザービリティを優先できるデザイナー

前にも述べましたが、最近は「ユーザー目線」がかなり重要視されているように感じます。
突出したデザイン性をユーザーが追い求めるのではなく、ユーザーに寄り添ったデザイン性が好まれる今の時代、UI/UXデザイナーという職業もできるぐらい、ユーザーの行動や体験に重点を置いたデザインが求められています。

そんな中で、自己主張の強いデザインや自分目線のデザインばかり提案してもクライアントは納得されないでしょうし、結果も出るわけがありません。デザイナーの役割はあくまでクライアントの要望に結果で応える事なので、自身の感性を抑えてでもユーザーの立場に立ったデザインを作る必要があります。

今後も企業がユーザーの要望に寄り添ったアプローチをする限り、自分の個性よりもユーザービリティを優先できるデザイナーが求められるのではないでしょうか。

バランス感覚があるデザイナー

これまで書いてきたとおり、デザインがビジネスに深く関わり結果を出すためには「ユーザー目線に立ったデザイン」が不可欠で、経営に関わるということは企業の幹部クラスに意見を伝える機会も増えるため、デザイン以外の幅広い分野の知識が必要になります。

デザインに関する専門的な知識を学んでいたとしても、ユーザー目線に立ったディレクション的思考ができないデザイナーは淘汰され、別分野出身でも広く物事を観察しデザインに活かせる人材がデザイナーとしてより採用されやすくなると感じます。
正直、絵柄作りだけで言えばクラウドソーシングでも間に合う事が多いですからね。

企業・ユーザー・デザイナーそれぞれの視点に立ち、俯瞰的に物事を観察し判断できるバランス感覚があるデザイナーやディレクターが、今後益々活躍するのではないでしょうか。



まとめ

今後、デザインとビジネスの関係性は、より深く、より濃くなっていくはずです。
そして、ユーザーの求めるデザイン性や価値観も変化にあわせて、デザイナーに求められる専門性やスキルもより高くなり、幅広い分野の知識と視野が必要にな流のではないでしょうか。

デザイナーにとっては本当に大変な時代になったと感じる今日この頃ですが、デザインにとって「ユーザー目線」が大切であることは変わりません。
常にユーザーの立場を考えデザインし続けることで、企業にとってもユーザーにとっても価値のあるデザインを生み出す事が出来るような気がします。

ここまで偉そうに書いてきた私自身も、ユーザーの存在を忘れてデザインしてしまう事がありまして…。これから増えるかもしれな別分野出身のデザイナーに淘汰されないよう、どんな案件でもユーザー不在のデザインをしないよう常に心掛けていようと思います。

時代の変化もあり色々大変かもしれないけど、ポジティブに考えると「デザイナーという職業にはまだまだ可能性がある」とも言えるので、今現在デザイナーであることに感謝をすべきかもしれないですね…。

「ビジネスにおけるデザインの重要性と、今後のデザイナーの役割とは?」でした。







ビジネスにおけるデザインの重要性と、今後のデザイナーの役割とは?