40代デザイナーが真面目に語る、デザイナーが40歳までにしておくべきこと

40代デザイナーが真面目に語る、デザイナーが40歳までにしておくべきこと






数ヶ月前に退職した自分の部下が言っていた退職理由の一つが「将来的な不安」というものでした。
今の世の中、どこの会社でも不安あるわけですが、特にデザイナーという職業は「安定」とは程遠い場所にいる気がするので、彼の言っていた「将来的な不安」というのも間違いではないとは思います。

若いデザイナー持つであろう「将来的な不安」を少しでも和らげるため、40代を迎えたデザイナーが40歳になるまでにしておくべきことを、自分の経験を踏まえて真面目に考えてみました。

そもそも40歳を過ぎてもデザイナーを続けることは可能?

そもそも40歳過ぎてもデザイナーという職業は続けれるの?

そう思う方もいるでしょう。自分はツレから「まだ続けてるの?頑固だね(笑)」と会うたびに言われます。どうやら「デザイナーは若い人がやる職業」というイメージが強いようですね。

デザイナー数の比率

Ⅳ デザイン関係統計資料 – 経済産業省によると、日本のデザイナー人口は30代が一番多く、その次に40代が多い事がわかります。
つまり世の中では多くの40代のデザイナーが活躍しているという事なので「40歳を過ぎてもデザイナーを続ける事ができる」というのがとりあえずの結論です。

ちょっと安心しました。

…というのは気が早い。
この統計は2010年の数字なので、2019年現在は状況は変化していると思われるのと、当時のデータでも40代後半から50代にかけては急激にデザイナー人口が減っていることを考えると、40歳を過ぎてもデザイナーを続けることはできるけども、年齢を重ねるごとに難しい道のりになるであろう事が想像できます。

まぁ40代になるとディレクターや制作営業など他職種にスイッチしたり、独立してフリーランスや起業する方が増えるので、数字の変化はその為だと思いますが、どちらにせよ40代を過ぎても現役デザイナーを続けようとするならば、それなりのスキルと経験が必要になります。
自分も40代を迎え、40歳になるまでにやっておくべきだったなと思う事や、やっておいて良かったなと思う事など色々ありますが、これから40代を迎える若いデザイナーさんが「40歳になるまでにやっておくべき5つのこと」としてまとめてみました。



デザイナーが40歳になるまでにやっておくべき5つのこと

別に「40歳」と限定しなくても良いじゃなか。人生は常に勉強だぞ!という意見は決して間違いではありません。
でも、40歳過ぎてから新しいことを始めたり、色々なことに手を出しても、遅い感じというか、余計にエネルギーが必要というか、なんか効率が悪いんですよね。
やっぱり20代・30代から40代にかけて成熟させるような流れが理想的だと思うので、「40歳」をひとつのリミットとして設定しておくのは間違いではないと思います。

デザインに関係するたくさんの知識・スキルを身につけておく

デザインに関係するたくさんの知識・スキルを身につけておく

何を持って「デザイン」と呼ぶかによって変わるかもしれませんが、とにかく多くの知識・スキルを身につけておく事が、40代でも現役デザイナーとして活躍するカギになります。
これは紙媒体でもWEBでも絶対に断言できます。

昨今ではWEB・動画・グラフィック・ゲーム・プロダクトなどからコミュニケーション・経営・教育に至るまで、あらゆる分野で「デザイン」が関わっています。
WEBデザインの場合は、プログラムやシステムなどの付随する知識やスキル。ゲームデザインの場合はゲームプランニングやキャラクターデザイン。コミュニケーションデザインなら心理学や統計学など、デザイナー本来の業務であるビジュアルを形成する作業以外でも身につけておくべきスキルや必要とされる知識は沢山あります。

そうした絵作り以外のスキル・知識を若い頃から習得しているかどうかで、デザイナーとして40代の迎え方が大きく変わると思います。

例えば

デザイン会社に勤務するAさんの場合

Aさん

40歳までグラフィックデザイナーとして紙媒体専門でデザインをしてきました。
フライヤー・チラシ系のデザインには自信があります。WEBデザインに関わることもありましたが、イラレで絵柄をデザインするのみでコーディングやシステム関係は全く手を出していません。

印刷会社に勤務するBさんの場合

Bさん

30代から将来に不安を感じてコーディングを覚え、その流れでブログを始めてアクセス解析や集客方法を勉強しました。
社内でWEB制作を内製化する話が出た時には積極的に関わり、最終的にはWEBディレクションを任され、クライアントさんと打ち合わせを重ねる日々です。
40歳を迎えた今現在、ディレクターとして紙媒体とWEBの双方に携わっています。

そして偶然にも二人が勤務する会社が同時に倒産してしまった場合、再就職しやすいのはどちらでしょうか。

給料や勤務条件にこだわらなければ、どう考えてもBさんだと思いますよね。自分が面接する場合でもBさんを選ぶと思います。
その差は何かというと、やっぱり「知識・スキル」の差です。40代になれば20代・30代とは違ったスキルが求められます。30代の人間が出来ることをわざわざ40代の人間がやる必要はありません。若いスタッフにやってもらえば良いのです。逆に若いスタッフには出来ない事が40代には求められるので、企業側からしたらAさんの経歴はどうしても物足りなく感じますよね。

とりあえずWEBを例に取り上げましたが、どんな事でも良いと思います。とにかく「デザイン」に関わるあらゆる知識・スキルを身につけておくと、後々必ず役に立つ日が来るはずです。

人間関係を大切にする

人間関係を大切にする

デザイナーに限った事ではなく、仕事というのは「人間関係」で成り立っていると思います。

自分が関わっている案件で、校正紙を持って行く人間によって修正量が変化するというような分かりやすいクライアントもいるので、まぁ90%ぐらいは「人間関係」のみで決まるんじゃないかと感じています。もちろん社内・外問わずの話。

実はコレ、ちょっと前まで自分が抱えていた問題で、仕事でもプライベートでも「あ〜人間関係をもっと大切にしとけば…」と後悔する事がちょくちょくありました。

細かく書くと長くなるので割愛しますが、とにかく人間関係でうまくいかなかった仕事や、人間関係が良ければもっとうまくいったであろう案件がいくつもあったので、最近は仕事そのものよりも人間関係に気を使いまくっています(笑)

その成果なのか、今ではクライアントの担当者さんからサイクリングに誘われたり、協力会社さんから個人的にWEBサイト制作の案件をもらったりと、最近は良好な人間関係のおかげで仕事以外の幅も以前より広がってきました。

仕事を覚えるよりも面倒で難しい事かもしれませんが、有意義な40代デザイナーを迎えるためにも、デザインスキルと同じかそれ以上に人間関係を大切にしてください。

コミュニケーション能力を磨く

コミュニケーション能力を磨く

これも「人間関係」と同じくデザイナーに限った話ではないのですが、クライアントの代弁者とも言えるデザイナーにとっては、コミュニケーション能力は重要なスキルです。

どこからどこまでを「コミュニケーション」と捉えるかで判断が変わりますが「コミュニケーション無くしてデザインという仕事は成り立たない」と言えるぐらい、日常の業務においてコミュニケーションが必要で、クライアントからのヒアリングや提案、プレゼンテーション、電話対応、ディレクターや営業との打ち合わせ、外部ブレーンへの発注、製版・印刷など後工程への指示、新規クライアントへの同行…など、常に誰かとコミュニケーションを取り続けている状態です。

たまに「人前で話すのが苦手で…」というデザイナーさんもいるようですが、苦手だからと言って人前で話さなくて良いなんて事にはならないし、こちらの苦手意識に気を使って話を聞いてくれるクライアントはそういないので、人前で話をしたり、人の話を聞くことが苦手なデザイナーはそれだけで損をすることが多くなります。
「人間関係」の部分でも書きましたが、新規の顔合わせや打ち合わせの際に上手くコミュニケーションが取れるかどうかが、その後の仕事の結果に影響することも少なくはありません。

身近な例をあげると、私が現在メインで担当している案件には前任者がいたのですが、クライアントの担当者さんと上手くコミュニケーションが取れなかった為に「何を考えてるかわからないから担当を変えて欲しい」とクレームが入り担当を外される事となりました。この場合、前任者は担当を外されたからよかったものを、もしクライアントに嫌われたまま担当を続ける事を考えると相当ツライものがあります…。デザインスキルがあるのに、コミュニケーション能力が足りないというだけで活躍の場が狭まってしまうのは勿体無いですよね。

若い頃は「人にどう思われても関係ありません」と言えるデザイナーも、40代を迎える頃には誰でも「人にどう思われるかが大切」と気づくはず。その時になってコミュニケーション能力を磨こうとしても、本人の性格や経験にも大きく左右される要素なので、すぐに成果が出るものでもありません。若い頃から40代にかけて、徐々にコミュニケーション能力を伸ばすというのが理想なので、コミュニケーションが苦手というデザイナーさんは、自分の将来のためにも勇気を出して頑張ってください!

自分自身の着地点を見据える

自分自身の着地点を見据える

たまに「人生とデザインって似てるよなぁ」と思うんですよね。

チラシでもWEBサイトでも行き当たりばったりでは作れません。問題点や課題・目的を明確にして着地点を決定してからデザインワークに入ります。

これって私たちの人生も同じで、進学・就職・結婚のような大きな節目から、旅行・飲み会・誕生日などの小さなイベントまで、未来の自分を想像して課題・問題点・目的などを洗い出し最終的な着地点を決めています。普段はあまり意識していないかもしれませんが、ちゃんとデザインワークと同じようにコンセプトや目的を決めているから、志望校に入学できたり希望の企業に就職できるわけですね。

そう考えると人生とデザインは似ていると思いませんか?

デザインワークと同じように、しっかりと着地点を見据える事で、そこまでにある課題・問題点・目的が明確になり「今やるべきコト」がしっかりと見えてくるはずです。
40代になった自分は何をやっているのか? 何をやっていたいのか? そして、そうなる為には何が必要か? というようなビジョンを明確に持ち、しっかりと自分自身の着地点を見据える事で、ゴールではなく、さらなる飛躍の過程として有意義な40代を過ごせるような気がします。

40歳になる頃にはフリーランスや起業をしているのか、ディレクターや営業職として活躍していたいのか。若いうちから着地点を決めていて損はありません。

もし、何も考えずに間に合わせで作ったチラシのように、行き当たりばったりで自分の人生設計を決めたとしたらどうでしょうか? 考えただけで怖いですよね…

適当に作ったチラシは修正すれば良いチラシになるかもしれませんが、残念ながら人生は簡単に修正できません。行き当たりばったりで決めた事を後から後悔しても遅いんですよね。
最近「デザイン思考」というワードを色々な場所で耳にしますが、自分の一番身近にある人生こそ「デザイン思考」で向き合う必要があるのかもしれません。

20代・30代のうちに他業界に転職する

20代・30代のうちに他業界に転職する

終身雇用が保証されない今の時代、新卒入社から数年で転職する人も多いようで、自身のスキルアップや、より良い職場環境を求めて転職活動をすることが当たり前の時代になっている気がします。そんな流れの中、スキルアップや職場環境改善を求め転職活動をしているデザイナーさんもいらっしゃると思いますが、流れとしては「デザイナーからデザイナーへの転職」が多いのではないでしょうか。

でも、ここで伝えたいのは「デザイナーから他業種への転職」という選択肢も視野に入れるべきということ。

デザイナーって長時間労働・低賃金というイメージがありますが、まぁそれは…残念ながら間違っていないんですよね。
そのため、トヨタ自動車やデンソーなどの大手企業に勤めてる人間と、自分の職場環境を比べて虚しくなり退職という若手もいるようで、退職した自分の部下も退職理由の一つにそんな事を言っていました。

自分の部下がそんな理由で退職するのは残念だと思いますが、その時は間違った選択ではないと思ったのも事実。
やっぱり20代〜30代前半を対象とした求人は多いですが、40代対象となると極端に求人数が減ってしまいます。デザイナーという職業にこだわって今しかない選択肢を捨てる必要はないと思うんですよね。

あと巷でよく言われますが、どうしても年齢を重ねるとデザインの感性も鈍ってしまうので、ライバルが他社デザイナーではなく、社内の若いデザイナーという何ともヤリキレナイ未来が待っていたりします。そんな状況で仕事を続けるのも…ということで40代・50代で転職しようと思い立っても、なかなか良い企業にめぐり合うことはないと思いますし、もっと悪い職場環境になることだってあり得るんですよね。

結局は、自分自身に「何歳までデザイナーを続けるのか?続けたいのか?」という問いを投げかけた時に「もちろん定年までっしょ!」という答えが出せない方は、デザイン業界以外にも目を向けて、自分の将来設計を考え直すこともアリだと思います。



他業界を経験したデザイナーはかなり強い!

ちょっと話は変わりますが…

自分は20代の頃に大手運送会社で2tトラックの運転手をしたり、30代前半には勤務していた印刷会社が廃業したタイミングでインフラ系企業の営業職を経験したり、それ以外でも印刷会社に勤務しながらマクドナルドでマネージャーをやったり、パソコン教室の講師をやったりと色々な職業を経験しましたが、結局は「やっぱ自分にはデザインの仕事が向いているわ」ということに気がつき、デザイナーとして頑張ることに決めて今に至っています。

今思うと自分もずっと迷っていたんですよね。
このままでいいのか?」「このままデザイナーを続けていけるのか?」「会社が倒産したらどうしようか?」と。

それで20代半ばから10年ぐらいの間、ホント色々なことに手を出していたのですが、その時の経験や考え方が今はとても役立っているし、むしろ社内の他のデザイナーには無い自分の強みだと思えるので、他業界を経験した上でデザイナーとして腰を据えるのもアリかなと思います。

デザイナーって想像以上に色んな業界に関わる機会がありまして、それなりの規模の印刷会社とかになると、それこそ何百という企業さんを相手にしています。
そうなるとやっぱり、他業界の経験が無いデザイナーよりも、他業界・他職種の経験や常識を知っているデザイナーの方が重宝されるに決まっていますよね。そして何より自分自身が詳しい業界のクライアントさんとの打ち合わせは、めっちゃ楽しいんです!

一度他業界・他職種に転職したけど「またデザイナーがやりたい!」と思った方、デザイナーという職業は他業界での経験が活かせる職業だと思うので、諦めずに頑張ってください!

結局は「将来どんな自分になりたいか?」を明確化する事が大切

結局は「将来どんな自分になりたいか?」を明確化する事が大切

40代になると、これからの人生の事について色々考えてしまうんですよね。老後に2,000万円必要って!ナニソレ!とか(笑)

今回、色々考えながら記事を書いていて思ったのは、40代になる前もなった後も「どんな自分になりたいか?」を明確化するのが大切ということ。
40歳過ぎてもデザイナーとして働いていたいのか、ディレクターや営業として活躍したいのか、それとも全く違う仕事がやりたいのか。

その時の状況に流されるのではなく「その時にこうなる為には、今は何をするべきか?」という考え方を持っていれば、自ずとやるべき事が見えてくるし、数年後の目標ができるので毎日の仕事も楽しくなるかもしれません。

将来の目標と言うと大袈裟になってしまうので、ホント単純に「どんな自分になりたいか?」を言葉に出して言えるぐらい明確化し準備しておくと、胸を張って40代を迎える事ができる気がします。

まとめ

なんか20代の頃って「ティガレックスってどうやって狩るの!?」ぐらいのレベルで毎日悩んでいた気がするんだけど、さすがに40代で「ティガレックス」とか言ってられないですね…

正直自分では40歳という自覚が無いまま40代を迎えたわけですが、40歳になるまでにやっておくべきだった事、やっておいてよかった事など40代デザイナー目線で真面目に考えてみました。

ちなみに退職した元部下は、トヨタ系の企業に勤めると思いきや、地元の小さなデザイン会社に就職したようです。オイオイそれめっちゃ不安やんか…。

「40代デザイナーが真面目に語る、デザイナーが40歳までにしておくべきコト」でした。

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2018年8月16日
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