WEBを筆頭にデジタルツールが広告手法の主流になってしまった昨今、チラシで集客ができないと思われているクライアントさんが増えています。
ただ一方で、リスティング広告よりもチラシの方が反響が良かったというクライアントさんもいて、まだまだ案件によってはチラシで集客を狙える場合もありそうですが、以前よりも反響が悪いという事例も多々あるのも事実。
そこで今回は、長年チラシ制作に携わるデザイナー目線で、失敗しないチラシづくりについて書こうと思います。
絶対に押さえておきたい3つのポイント
クライアントさんと打ち合わせをしていると、他社チラシを見て「こういう表現をしたい」や「こんな感じのデザインにしたい」といった話がよく出てきます。
こうした絵柄先行のチラシづくりは多くの場合、集客実績を残せずに失敗するパターンとなりがちで、これまで自社の営業が失敗しているのを何度か見てきました。
理由として、絵柄先行のチラシづくりはターゲット不在の場合が多く、どれだけ見た目が良いチラシでもターゲット不在では掲載するコンテンツにも説得力が出ずに効果を発揮できません。
せっかくチラシ制作の依頼が来ても、集客効果が残せないと「やっぱりWEB広告の方がいいですね」なんて話になりかねません。そんな最悪な事態を避けるためにも、チラシづくりで絶対に押さえておきたい3つのポイントをお伝えします。
押さえておきたいポイントは以下の3つ。
- ターゲットとメッセージを明確にする
- サムネイルで情報を視覚化する
- メリハリあるデザインで情報を整理
ターゲットとメッセージを明確にする
チラシづくりにおいて大切なのは、誰(Dare)に対して、どの(Dono)ようなメッセージを伝え、どう(Dou)して欲しいのか、ということ。
私はこれら3つを「チラシ制作の3D」と名付けていますが、特に新人デザイナーや営業は3Dを全く無視して絵柄づくりから始めがちなので、クライアントの意図やユーザーのニーズと離れたデザインに仕上がりがちです。
案件に関わる人間が増えれば増えるほどこうした問題が起こる傾向にあると感じてますが、大抵の場合はターゲットとメッセージが明確では無いことが問題の原因だと思います。
逆にターゲットやメッセージが明確だと、社内・クライアント含めて共通認識ができるので、関わる人数が増えても事前に決定している共通認識を基準にコンテンツやデザインを制作できるので、制作途中で方向性がブレることが少なくなります。
その結果、ターゲットに伝えたいメッセージを効果的に届けることが可能となります。
例えば、とある学習塾のチラシを例に挙げてみましょう。
どちらのチラシが良いという話ではなくて、子供を学習塾に入れたいと思っている親の立場に立って、どちらのチラシがターゲットとユーザーが明確であるか?という視点で見比べてください。
パッと見の印象でも、左側のチラシの方が誰に対してどのようなメッセージを伝えたいかが明確に伝わって来ませんか?
左側のチラシは冬季講習の情報は控えめに掲載しながらも、成績の上がらないと悩んでいるユーザー層に対し、成績を上げる授業をするというメッセージをしっかりと提示しています。募集している層に近い年齢の学生をメインビジュアルにすることで、よりターゲットが明確になっています。
対して右側のチラシは、冬季講習の情報が大きく載されてはいても、メインビジュアルが講師陣のみでターゲットを示唆するコピーなどが無いため、下手をすると何のチラシかわからないという事になりかねません。
このように、同じ冬季講習というテーマでデザインしても、ターゲットとメッセージを明確にすることで最終的なアウトプットが大きく変わります。
サムネイルで情報を視覚化する
しっかりとターゲットとメッセージを明確にしたら、次はいよいよデザインワークに取り掛かる…のはちょっと待ってください。
先ほど説明したチラシづくりの3Dは言ってみれば「ターゲットとメッセージの言語化」で、漠然と抱いているイメージを言語化し共通認識をつくる作業でした。
その次の段階は、明確にしたターゲットに対してメッセージを伝えるために情報の視覚化、いわゆる「サムネイル」を制作する作業が必須で、これがあるかないかで失敗しないチラシづくりに大きく近づきます。
知り合いのベテランデザイナーが「最近はサムネイルを描けないデザイナーが多い」とよく話しているのですが、確かに自分の周りでもしっかりとサムネイルを描ける人っていない気がしますね。
実際にサムネイルを描くとわかるのですが、情報を視覚化してまとめるのは以外に難しく、手間がかかることに気付かされます。
それでも、メッセージの明確化・コンテンツと優先順位の確定・情報共有・デザインの方向性など、サムネイルが担う役割は大きく、扱う案件の大小に関わらず失敗しないチラシづくりにはサムネイルが必要不可欠です。
情報の視覚化という役割以外でも、デザイナーが制作に入る前段階でサムネイルをクライアントに確認してもらうことで修正を減らすことができたり、事前に掲載内容や情報量を想定できるため、紙面のタテ・ヨコや用紙サイズなど、実制作に入ってからでは変更不可能な要素も検証できます。
仕事の進め方はそれぞれで、サムネイルなんて作らないというデザイナーさんもいらっしゃるかと思いますが、騙されたと思ってサムネイル作りに時間を割いてみてください。デザインワークがかなりスムーズになりますよ。
メリハリあるデザインで情報を整理
ここからは実制作の段階になりまして、デザイナーが最も意識するべきポイントです。
そのポイントというのは「メリハリ」です。
コンテンツにメリハリをつけることで、意図したメッセージをターゲットに伝えることができ、同時に見た目も良くなるので、特にチラシ制作に慣れていないデザイナーはメリハリを意識したデザインを心がけてください。
こちらは、ある食品スーパーのチラシです。
誌面全体でしっかりとメリハリをきかせて見やすいチラシに仕上がっていますね。
全体のトーンは統一しながらも、カテゴリーごとに色分けし整理しているので、情報量が多くても視線の誘導ができたチラシとなっています。写真の扱いだけでなく色使いでもメリハリを意識しているのがわかります。
コチラは私がよく参考にしているのはヤオコーのチラシで、紙面左側は特売らしくグリッドレイアウトで、右側はメニュー提案で大きくレイアウトを変えることで紙面全体の構成にメリハリを付けつつ、各曜日の商品の扱いに差をつけ視線の誘導を図っています。
押さえておきたいのは「差を付けるだけがメリハリでは無い」ということ。
ここで紹介したチラシは、クライアントの持つメッセージ性やターゲットを理解し、カテゴリーや商品に優先順位を付け、視線の誘導・商品訴求の手段としてデザイン的にメリハリ使っています。
あくまでデザイン的な表現手法の結果であり「目的もなく扱いに差を出すのがメリハリでは無い」ということは常に意識しておく必要があります。
メリハリだけがチラシデザインのポイントではありませんが、どんなチラシを作る場合でも役立つ手法であることは間違いないので、チラシ制作に関わるデザイナーはメリハリあるデザインで情報を整理することを心掛けてください。
まとめ
細かいことを言えば、紙質・サイズ・色数・折込部数・エリア・時期など、かなり広い範囲を含めて「チラシづくり」と呼ぶので、失敗しないチラシづくりをするというのは、非常に難易度が高いことだと思います。
ただ、今回紹介した3つのポイントを前提にチラシづくりをすれば、クライアントにデザインが通らない、折り込んでも全く反応が無いという最悪の事態は避ける可能性が高まるはず。これまで絵柄づくりから入って失敗した営業を見てきたし、3つのポイントを意識し続けてきた私自身は良い結果を残すことができています。
最初に述べましたが、リスティング広告よりもチラシの方が効果が出たという案件も実際にあるので、ターゲットによってはまだまだ販促ツールとしての価値がある折込チラシ。今回の記事が新人デザイナーにとっては参考になり、ベテランデザイナーにとっては改めてチラシづくりを見直す機会になればと思います。
「デザイナーが教える 失敗しないチラシづくりのコツ」でした。